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第五十四話「薮の中からコニャニャチハ」
1999年8月8日13:45 日本 珠洲 ヘミングウェイ海岸其の笈
やけに大きく重々しい音とともにゼンソン号のハッチが閉まった。
謎の男の目が木陰になった茂みの中で光った(-_-- )☆キラリ
念願のサイフをゲットしたミケくんはゼンソン号を離れると鼻歌混じりに下生えをまたいで、垂れ下がった木の枝をくぐった。
そして謎の男は事の次第を見終えると、音もなくその場を後にした。
すぐに先程の小径に出たので、まさかもういないだろうと思いつつもHirokoの姿を探した。
その小径は右側が松林になっており、左側は背の高い薮が群生地帯でホテルの前庭まで鬱蒼と茂っていた。
その視線の先に、一心に目を凝らして薮の中を探るように見ているHirokoがいた。
「おお!まだここにいたん?Hirokoちゃん」ミケくんが駆け寄った。
Hirokoは、黙って薮の方向を指し示すと、口に人さし指を当てて黙るようにと身振で伝えた。
Hirokoが指した方をミケくんが見ると、10mほど斜め前方の薮の中になにやら動く影があった。
ミケくんの脳裏に危険信号が点滅していた。不審に思って近づいていくミケくんとHiroko。
薮のすき間から、だんだんその物の姿がはっきりし始めた。しかしどうやら相手からはこちらの姿は見えていないらしい。
それは肌色をした大型犬くらいの生物で、地面に蹲りちょうど耳辺りの場所にタバコの箱くらいの不思議な機械を当てていた。
とても内容は聞き取れないがボソボソと低い音を立てていた。用心して薮に近づいていくミケくんとHiroko。
その肌色をした生物は、人間で云うウンコ座りの体制で、人間で云ところの携帯電話のような機械を耳に当て、
人間で云うところの"詫び"の気持ちを相手に伝えていたように今となっては思える。
その生物は彼らの姿を目に留めるやいなやウンコ座りのまま囁くように吠えた
「ややややっっっっ、これは・・・どうしたんですか?こんな所に(@_@;)おががっっ」何気に地球の言葉を話す肌色の生物。
「おまいの方こそこんな所でど〜したんだよ?(* ̄∀ ̄)ニァ」ミケくんはその肌色の生物と向き合う格好になった。
「いや、何でもないんだケド、ちょっと・・・うん、ごめんね・・・うん、大丈夫だから(;^_^A アセアセ」
その生物はいかにも、ミケくんたちが邪魔な感じでまだ箱形の機械に向かって謝っていた。
世にも不思議な生物を目の当たりにしてHirokoは笑い転げていた。
謎の男は、その一部始終を、離れた木陰から不思議そうに覗いていた。
まだ、ボソボソ通信をしている茶髪で肌色の生物を置き去りにして、ビ〜チパラソルを手に入れるために彼らはホテルへと向かった。
ミケくんが生まれて初めて裸足でホテルに足を踏み入れた時、周りの客の視線は、驚くほど冷たかった。
ヘミングウェイ海岸に聳え立つビ〜チホテルは珠洲市有数のランドマ〜クだった。
上品なパステルカラ〜に彩られたそのホテルは、この辺りに大きな建物がないこともあって一際大きな日影を作っていた。
昼食時を過ぎていたせいもあって、その冷やりとしたロビ〜内には観光客の姿はまばらだった。
この8Fにエアロビ東の活躍するスタジオがあるのだった。
今ごろマダムをキラ〜しているに違いない。
しかし、今回の目的はビ〜チパラソルを手に入れる事だった。
ミケくんとHirokoはキョロキョロとフロントを探した。こじんまりとしたフロント発見、
お姉さんが疑い深そうな目でこちらを凝視していた。
"こ・・こいつら一体何者?(^_^;)ゞ"
ズズいとフロントに歩み寄るミケくんとHiroko(<●> <●>;)ズンズンズンズン。
圧倒されて後ずさりするフロントのお姉さん。(゚o゚;) はぅっっ
「あの・・・・( ̄◇ ̄; ビ〜チパラソル貸してもらえませんかぁ?」
「え?・・・・は・・はい、少々お待ちください」そそくさとドアの無効に消えていった。
待ってる間に二人はロビ〜内を見回してみた。
片隅に地方の特産品や果物などの土産物を展示していた。
あれこれと、手に取って眺めているうちにお姉さんがパラソルを持って、すぐそばに立っているのに気づかなかった。
「あの、これ・・・保証金をいただきたいんですけど」ミケくんはポンと手渡されて驚いた。
とにかく、これでまたひと泳ぎできるね、とスキップと笑顔でビ〜チホテルを後にした。
この時、まだ深刻な大事件がキバを剥いているとはつゆ知らずの二人だった。
謎の男は白髪混じりの長い顎鬚を満足そうに撫でると、エンジンをかけてしばらく笑っていた。
急に真面目な顔に戻ると、黒塗りの車を一気に人気のない海岸通りに出した。


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