第五十伍話「カニカニ団、再び泳ぎ出す」 1999年8月8日14:30 日本 珠洲 ヘミングウェイ海岸其の柔 |
帰り道の砂利の小徑の上もまるで火にかけた鉄板のように熱かった。 あまりに暑かったので、借りたパラソルをシャレで開いてさしながら歩いた。 すこしでも日陰に入ると涼しく感じられた。 途中、先程の"肌色の極悪な中学生の得体のしれない団体(しかもCore)の団長で半年後には昼食は官庁の食堂に入り浸ることになる"生物"が まだウンコ座りで地球のどこか(たぶんトウキョウ)に向けて通信を続けていた。 目ざとく見つけたHirokoはギャグで 「はい〜紙っっっ」と手を差し伸べていた。 いかにも迷惑そうに泳いだ目でニガ笑いを続けるその"生物"はまた言い訳をいってるように見えた。 まだ、ボソボソ通信をしている茶髪で肌色の生物を置き去りにして、ビ〜チパラソルを手に彼らは皆の待つテラスハウスへと向かった。 パラソルを開いたまま店内に入ろうとするミケくんたちが、テラスハウスに到着した時、 カニカニ団は時間が止まったかのように、まだ飲んだくれていた。 「おお、いま捜索隊出そうとおもってたんよ。で、団長は?」Maroがおいしそうにジョッキをあおった。 パラソルを畳んで傍らに置き、空いた席に座りながらミケくんがいった。 「ウンコしてた」 「ははははっっそ〜そ〜」 笑い転げるHiroko 「怪しいよね〜団長」 「まだ、電話してんのかいっっっっ」たつゆきがラ〜メンをすすりながら目を丸くした。 「好きだねぇ〜団長も・・・よくそんな長話のネタがあるよなぁ」headsの声にうなずくカニカニ団 「電話代いくらになるのよお〜ったく、すごい金額じゃない?」あつこが現実的な意見をった。 「だおねえ〜、今日だけで一万くらいいってたりして」ミケくんが遅れを取り戻すようにビ〜ルをあおった。 「団長もからっきし女には弱いからなぁ〜」KMが追い打ちをかける。 その時、ドアの所から入ろうにも入れないで佇む男の影があった。 「ミナサン〜何の話してんでしょ〜か、ワタクシ入りにくいじゃないですかぁ」それは紛れもないカニカニ団の団長の影と声だった。 「おおおお、どした?満足いったか?」KMが団長に聞いた。 「いやいやいや、そんなことないですよう」それに応える団長は意味の通らぬ言葉を吐いた。 気まずい雰囲気が流れた、団長はロッテリアで逆立ちしながら注文をするくらいに不自然な印象をまき散らした。 「そろそろ海に戻りましょう!」 いきなし魚介類のセリフみたいなことを云ったMBXの意見で、再びヘミングウェイ海岸に戻って泳ごうということになった。 「まだ、4時間は泳げるぜぃ〜」浮輪を持ちながらheads、たつゆきとKMは先を争うように砂浜に飛びだしていった。 重たい腰を上げながら、カニカニ団は再びヘンミングウエイの海に繰り出した。 Hirokoは、焼けるからということもあって、泳がなかった。 結局、水着に着替えるコトもなく、ずっとパラソルの下で過ごした。 白いサンバイザ〜を目深にかぶり、渚に出てヒザまで裾をめくって、その白い足が波と戯れる事はあっても、それ以上は海に近づかなかった。 よく見かけるが、名前はわからない渡り鳥が夏を連れて能登を横切っていった。 勢いよく浮輪が海に投げ出された。 それにつれて、ビ〜チボ〜ルが後を追うように飛ばされていった。 砂浜に再び建設された海水浴基地はSakaの手によって管理されていた。 荷物の配置を入念にしていた。 というもの、ヘミングウェイ海岸に吹き寄せる風が段々と強くなってきたからだった。 たつゆきの手を離れると、糸が切れたようにビ〜チボ〜ルが沖に流されていく、それを追いかける方もたいへんだった。 カニカニ団は少し沖に行ってみようということになり、浮輪2つを中心に見事なチ〜ムワ〜クで安全圏をしめすロ〜プを越えていった。 だいたい、このロ〜プの位置あたりが水深1.5mを示していた。 ここら辺りになると、海のエメラルド色もいっそう深みを増して、海流の変化で幾色にも見えた。 引き込まれそうな海の色に、しばし戯れることも忘れ皆見入っていた。 さすがに足がつかなくなり始めると、みな無口になった。 立ち泳ぎをしながら、砂浜を返り見ると、白い砂に鮮やかな緑の防砂林が映え、コテ〜ジ風のテラスハウスがポツンと立ってるさまは、 とても日本海に見えず、まるで南国さながらの臨場感を醸し出していた。 皆が沖にいってしまうと、寂しげにHirokoがポツンと一人パラソルの下で海を眺めていた。 浮かれた観光客気分のカニカニ団は、南風に誘われるままに沖へ沖へと流されていった。 |