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第五十七話「危うしっっっ!!ゼンソン号 ミケくん、それ・・マ・・・マジェ〜?編」
1999年8月8日15:30 日本 珠洲 ヘミングウェイ海岸其の柔弐
ミケくんは、まだ砂に潜り続けていた。追い出されたハマグリやヒトデが、さも不愉快そうに海へと戻っていく。
「マサカ・・おいおい、ゼンソン号になにか?」カンの鋭いクロネコが静かに尋ねた。
「おおおおおお〜〜〜また出たんか〜っっっっゼンソン号の呪いぃいい(;^_^A アセアセ 」
この言葉に、前回ゼンソン号と共に仲良く死にかけた団長が叫んだっっ。
ミケくんは、ただ
「やっちまったお〜〜うがががが(;_; )オロオロ ( ;_;)オロオロ」と繰り返すだけであった。
「何があったんだよ?、お〜〜〜いいミケくん」Sakaがさすがに心配して、近くにやって来た。
「ははは、他の車にぶつけられてたりして」Hirokoが縁起でもないコトをいう。
ビ〜チパラソルの作り出す影がミケくんの土下座スタイルでうな垂れた首の辺りを登り初めていた。
そして、にわかにミケくんの背中には脂汗が滴り砂の上に染みが拡がり始めていた。
安っぽい青春ドラマにありがちな、親が病気で牛乳を盗んだクラスメ〜トを説得するシ〜ンのようにミケくんを囲んで輪ができていた。
待っていても、ミケくんの口からは要領の得ない、切れ切れの言葉しか出てこなかった。
「ビ〜ル買いに行ったんよ、・・・売店まで、で金払うときに・・」
「サイフを落としたっっ!」そこまで聞いててMBXが叫んだ。
「で、サイフはあったんよ。でもあるハズのモノがポケットに入っていないってコトに気づいたんよ・・」ミケくんが続けた。
「ま・・・まさか・・・鍵」カンの鋭いMaroの声だった。
それは待っていた事実は団員たちの予想を遥かに越えたものだった。
そしてそれはカニカニ団にとってお約束のように致命的だった。
「ミケくん、それ・・マ・・・マジェ〜?落としたの?」驚いたSakaが思わず叫んだ。
「・・・いや、ゼンソン号にサイフ取りに行った時に、中にいれたまんま鍵閉めちゃった」ミケくんの髪が一瞬にして白髪に変わっていった。
「ゴゲゲっっ、うわぁ〜それはキツいなぁ」団長が近くの木っ端切れを、まだ明るいヘミングウェイ海岸にほうり投げた。
ああ、せっかく盛り上がってきたのに、ことのほか事態は深刻だった。
「中にいれたままってのは、確認できてるの?」クロネコが立ち上がって聞いた。
「うん、閉めたときに持ってた記憶がないんだおねぇ(^_^;)ゞ」
「またJAFの登場かぁ〜〜?!」headsが前回の事件を持ち出した。
「いや、JAFはこんな所まで来ないんよ」Maroが訥々と云った。
Sakaが言葉を継いだ。
「そうなんだよ、ここら辺の人は自分で直すっっ」
顔色をなくして砂浜に肩を落とすカニカニ団。
周りで遊んでいた子供たちが、異様な雰囲気に何事かと立ち止まる。
「とにかく、後で探してみよう、どっかあるかもしれないし」KMが砂の上に座り直してミケくんを見た。
「しかし、やっぱり何かアルんだよねぇ〜〜ゼンソン号ってさぁ、毎年」たつゆきが笑いながら見回した。
それにつれて笑いの輪が広がっていった。
「あははは、確かに〜やってくれるよなぁ〜」
「スマンでし〜〜(^_^;)ゞ面目なさ過ぎ・・・」そういうとミケくんは頭を掻いた。
「うん、ちとどっかに落ちてないか探してくるわ」ミケくんは駐車場から歩いてきた道をたどろうとしていた。
誰も彼もが、これからの苦難の道を予想していた。
いずれにせよ、鍵が手に入らないということは、ゼンソン号をここに置き去りにしていく公算が高くなってきた。
人数は11人、車はSakaのランチア、クロネコのRX-7、そしてゼンソン号であった。
ゼンソン号が使えなくなった今、今夜の宿泊所である、あの狼煙館まで11人全員はとうてい辿り着けないのであった。
それよりも着替えを中にいれてる者もいたので、着の身着のままで旅館に帰らねばならないという悲惨な状況であった。
「旅館に置いてあるKMさんのランサ〜を取りにいかなきゃねぇ、無理だわな」たつゆきが遠く狼煙館の方角をまるで見えるかのように指さした。
「一休みしたら僕とコラさんで取りに行ってきますよ」
とりあえず一同、何とかなるとわかって安心し始めた。
これがいわゆるゼンソン号のお約束かぁ、つ〜か・・・いつも人災じゃんかよ・・・・headsは声に出さないで思った。


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