第七十四話 「ヘ(^^ヘ) (ノ^^)ノバンザ〜イ、これで東京に帰れる〜ぅう」 1999年8月9日11:30 日本 珠洲 ヘミングウェイ海岸其の柔鉢 |
ゲシュケはすっかり取り乱していた。 Sakaが胸元のロゴを見ているのに気づき、思わず言い訳が口をついた。 「デザイン変わった」 すでにゲシュケの醸し出すフイイキは新宿あたりの不法滞在外国人然としていた。 ゲシュケは肩を竦めると足下に置かれたボストンバッグを指さし、作業を始めてもよいかとSakaに尋ねている様にもみえた。 静かに鎮座しているゼンソン号をバックにSakaは無言で同意した。 大きく頷くとゲシュケは草むらに膝をつき、手際よくバッグの中から工具を取りだした。 ゲシュケの手にしたものは、一般の人には見慣れない奇妙な形をした鍵開け専用の特殊工具だった。 ワイヤ〜の先に金具が付いており、柔らかくしならせながら、ゲシュケはゼンソン号に近づいていった。 「見事ですよぉ」 ゲシュケはワケのワカんないコトをノベながらゼンソン号ににじり寄っていった。 フロントガラスに耳を押し当てると、車の中の様子を窺ってるように見えた。 しっっっっと唇に人さし指を当て、Sakaに喋るなと合図をしながら、金具をクルクル回すゲシュケ。 まるで魔法にでもかかったように凍りついたままのsakaは異次元に落ちてゆく感覚に襲われた。 呆然と立ち竦んでいるSakaにゲシュケは更に追い討ちをかけたのだった。 「もう、起動しましたよ」(=^.^=)/ ゲシュケはニッコリ笑うと大袈裟にゼンソン号のドアを掴んで開いた。 Sakaはアングリと口を開いたまま、呆然としてゼンソン号の内部を覗き込んだ。 篭った熱気がゼンソン号の中から火砕流のように吹き出してきて、思わずSakaはのけ反った。 その時、遠くから近づいてくる槍騎兵の微かなエンジン音を聞いたような気がして振り返った。 ゲシュケも同時に音のする方向に顔を向けた。 「あれれ?なんか様子が変だなぁSakaさんたち」海岸通りの信号に引っ掛かった時、たつゆきが声を上げた。 松林を透かしてゼンソン号が見えた。 同時に見知らぬ顎鬚をはやした男と向き合うSakaの姿がたつゆきには不自然に見えたのだ。 KMは用心しながら槍騎兵を右に、駐車場の中へと進めた。 小さな乾いた小川の上に架かった橋を渡り、その先のキャンプのテントが幾棟か張られたその薮の裏にゼンソン号は停めてあった。 たつゆきの声に反応して、カニカニ団のメンバ〜の目が一斉にそちらを向いた。 蝉時雨の音が一層激しさを増して、昼前の眠たげなキャンプ場を悪戯に賑やかに見せていた。 槍騎兵の砂利を踏み締める音が人気のない駐車場に響いていた。 ゲシュケは近づいてくるカニカニ団の現れたのを認めてたじろいだ。 「兄ィ〜、ゴメンゴメン遅くなってすまんだす」眠そうな顔をしてミケくんが助手席の窓から叫んだ。 槍騎兵はゆっくりとSakaたちのいるゼンソン号の所に近づいてきた。 「あれ、だれなんだろ?修理工場の社長さん?」Hirokoが首をかしげた。 というのも、どう見ても話しに聞いてた社長には見えなかった。 ・・・ドコかで見たような・・・ キャンプのテントがひしめく砂利道に足元を取られながらゴトゴトと槍騎兵は駐車場の外れの草むらの中に入っていった。 ゲシュケは吹き出る汗にも構わず、固唾を飲み込んで彼らを見守っていた。 すぐさま二台の車からカニカニ団が、うだるような陽気の中ドヤドヤと降りてきた。 それを見るやSakaは思わず走り出した。 「おい〜皆、待ってたんだよ〜〜(j_j)」 「おお〜Sakaさん、泣いて喜んでるぅ〜♪(●^_^●)/」headsがSakaに手を振った。 長閑な夏休みの朝を寛いでいたキャンパ〜たちの顔は、降って涌いたこの騒動をどう見ても迷惑そうに見ていた。 イキナシ静寂を破って登場したカニカニ団を歓迎しているようには見えなかった。(^_^;)ゞ ゲシュケはややうつむき加減で抜け目なさそうに近づいてくるカニカニ団を見回した。 「待ってたんだよ〜皆ぁ、もう開けてもらったよ、ほら」 Sakaの指し示した方をみるとゼンソン号の助手席のドアが見事に開いていた。 「おお!(j_j)やた〜〜やた〜〜、開いたかぁ〜」ミケくんが堪らず嗚咽が込み上げてくる。 「ドコに置いたの?問題の鍵は、ドア開いただけじゃ走らないからなぁ〜」MBXが車内を覗き込んでいた。 「えっと、たしかココらへんに・・・・ないなぁ〜」ミケくんは未だ危機を脱していなかった。 総出で車内を隈無く探すカニカニ団。 悲壮感漂うフイイキの中、荷物をひっくり返しては落胆のため息が聞こえてきた。 「そだっっ、おでのパソ入れてるリュックだわ、たしか、サイフ出した時だ〜ら」ミケくんが後部に潜り込んだ。 ゲシュケは独り身を堅くしてその捜索を眺めていた。 「うはははっっメッケたぞぉおお!!」(=^o^=)/F ←ゼンソン号の鍵 ヾ(@⌒▽⌒@)ノををっっっ!ヘ(^^ヘ) (ノ^^)ノバンザ〜イ、これで東京に帰れる〜ぅう+*( ̄▽ ̄)+* あぁシワヨセ♪ 日常の中の小さな幸せを噛みしめる一瞬であった。 |