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第七十六話「話をどう戻すか悩んでいたのかもしれない」
1999年8月9日12:30 日本 珠洲 ヘミングウェイ海岸其の弐柔
SAKAが車の中のゲシュケに向かって叫んだ「いったい、どうゆうツモリなんだよコイツ」
エンジンをフカしながらゲシュケはウインドウを少しだけ開けると不敵に笑って言った。
「わはは、シャレだって言っただろう?」
「だからシャレになってねえぇ〜つの」headsが車体を思いっきり蹴った。
「て・・・てめぇっ何しますアルか?!この野郎っっっっ」ゲシュケはドアのハンドルに手をかけ思わず飛びだしそうになった。
一瞬紅潮したゲシュケの顔が不思議なほどに止って見えた。
「わざわざワケのわかんねー事言いに来ただけかよ?」ミケくんが窓枠を掴みながら問い掛けた。
「オヤクソクだ、ガキじゃねーんだからおまえもオヤクソクくらい知識だろ?」ゲシュケは歯を食いしばってミケくんを睨んで見せた。
「そのオヤクソクがどうした?アフォか?おまえは」なんとかドアをこじ開けようと窓の内側に手を伸ばすミケくん。
「作者に詰問してくれ、作者が勝手で仕込んで後に困ってこういう事柄を巻き起こしたんだろ?俺に教育で言うのは首の寝違いってもんだ」
車を取り囲むようにしてカニカニ団が逃すものかとばかりにしがみついていた。
「言いたいことは何となくわかるんですけど、わけわかな言い争いですね」団長が側に居たあつこに首をかしげる。
「子供の喧嘩みたいだよね」あつこは、この騒々しいやり取りがなんだか遠くで聞こえてるような気がした。
躊躇した後にゲシュケは乱暴にギアをドライヴに入れるとそのままアクセルを踏み込む。
すぐさまタイヤが軋みゴムの焼けるような匂いが鼻を突いた。
「また来て四角でーす!」大袈裟に舌を出すとゲシュケは火花を散らして急発進していった。
団員達は振りきられるようにして慌てて身をかわし、呪いの言葉を浴びせかけた。
急発進した黒塗りの車は小石を跳ね上げて駐車場のゲ〜トへと向かって転がるように突進した。
はね上げられた小石をよけながらミケくんは追いかけたが、あっという間に出口を曲がる黒塗りの車が小さくなるのを眺めただけだった。
諦めて振り返ったミケくんは、まるで何か幽霊でも見たかのような形相だった。
真夏のヘミングウェイ海岸には夏休みの子供たちの歓声が響いていた。しかしここには届かなかった。
呆気に取られた10人の男女が同じ方向を見つめて呆然と立ち竦んでいた。
誰も声を出そうとしなかった。その時苦しそうな呻き声がして社長が転がりぱなしで放置されている事に初めて気付いた。
「だいじょうぶ?社長。いったいどうしたんよ?」Sakaが社長を引き起こして縄と猿轡を外した。
「何がなんだかわからんのよ、いきなり当て身を食らって車の中に押し込められたんだよ。何だいあいつはいったい・・・」
社長も混乱して矢継ぎ早に早口でまくし立てた。
「とにかく無事でなにより」Maroがそういうと、また沈黙の重たい空気が辺りを覆った。皆疲れていたのだ。
「あいつどっかで会ったような気がするよね」たつゆきがポツンと云った。
「だよねだよね、狼煙館に居なかったっけか?」応じるようにHirokoが人垣から顔を出す。
「つ〜か、おでたちが狼煙館に滞在すんのを見抜いて、住み込んでた方がよっぽど預言者としてスゴいつ〜の、そっちの方だろ?驚くのは」
ミケくんが叫んだ。
「預言者??なんじゃそら」Maroが不思議そうな面持ちでミケくんのほうを見た。
物音に驚きSAKAが心配そうに社長を振り返ると、KMの手を借りて汗だらけになった社長が立ち上がったところだった。
「いったい何者なんだ?あいつ」
すでに見えなくなってしまったゲシュケを追うように見据えて、どうしらたいいか思案しているようだった。
その時にミケくんの口から信じられないような言葉が洩れてきた。
「きっと作者もいきさつを説明すんの面倒臭いと思っているだろうし、社長には悪いケド、このさい話端折るってことでどうかな?
ゼンソン号も無事救出出来たわけだし、作者も悪乗りでフィクションかましてはみたが後始末に困って中断していたみたいだし」
その時、急にミケくんは凄く嫌な予感がした。
「なんか・・・あいつシリ〜ズ化しねぇ〜だろ〜な、来年とかも。マサカ・・・」


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