早いもの,学校を卒業後XX年を経て,会社人間も御他聞にもれず化石人間になりつつある。
嫌いなもの,好きなもの,いろいろあるが,余り周りを気にかけることなくXX年が経ってしまった。どちらかと言うと,会社生活は周りに気を遣う必要があり,自分の趣味を余り表面にだすことなく,過ごしてきた。「ゴルフ」,「テニス」,「カラオケ」,いずれも出来ず,何となく過ごしにくく感じてきた。気難しい奴,仲間に溶け込まない奴,なんて言われていたのかな。皆と付き合えることは,お酒くらい。タバコも駄目。最近は,「魚釣」などという野蛮な趣味も周りで流行だし,泳げない僕は困惑気味。<実を言うと,釣り針で自分の指を釣った嫌な思い出があるから,魚釣りが嫌いになった。>カラオケを歌えば,エセ・オペラ調の発声で,大切な小節など芸は出来ない。まわりも白けるだけ。ポップスもお洒落じゃなければ歌えない。(練習量が全く違う)
学生時代はコンパ委員もやって,皆を楽しくすることに心を遣ってきた。今も,馬鹿な駄じゃれを言って,リストラの暗い雰囲気を明るくすることに心を砕いている。
会社生活なんて,仕事は半分くらい,それ以外の生活の方が大きい。<何か暗いなあ。
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しかし,最近某君は,ハナキンの定時後,いそいそと「ベルサッサ」でどこかへ出掛けるのです。出かける先は,桜木町の某所(実は横浜市の婦人コーナ)。[某君がその婦人コーナに入って暫くして,そこから,妙齢の美女が出てくる。ひょっとして,...某君では??と思ってみてみたが,そうではなかった。一安心。]
そして,実はそこで待っているのは,絶世の美女でもなければ,水もしたたる美男子でもなく,もちろん「カラオケ」でもない。すでに第一線を降りた悠々自適の人,まだ若くはつらつしているがどこか一風変わっている人,など(もちろん某君のような変人も),男ばかり30名余が三々五々楽しそうに集まってきます。そして2時間ばかりストレス発散して帰途につくが,周りはご存じ野毛町,嫌いではない人ばかりの集まり,自然と酒屋に足が向く。題して「ワークショップ男声合唱編」−−横浜市文化事業振興財団が主催する男声合唱の勉強会です。平成6年6月発足,指導者:ボニージャックスのリードテナー,大町正人さん,...たった3箇月の限定の勉強会に集まった全く見ず知らずの男達30余名。第一声の音出しから「これは負けられない」と密かに決意し,3箇月終了時の出席率は90%を越えるという現状。
すでに,限定の3箇月は経ってしまったが,さすが大町さん,「帆船日本丸男声合唱団」に向けて再発足。将来は,ご存じ,桜木町はMM21,ランドマークタワーのそばの「帆船日本丸」専属の男声合唱団,...各種のイベントが目白押し。全くのボランティアで,手弁当での活動,一体何の楽しみがある。
しかし,見ず知らずの30余名の男声達が密かに決意した。「これは負けられない」,これです。一体何処にこのような人達が隠れていたの?一回目の「カデンツァ」から,一応ハモルじゃないの!こちらも,コール生活,会社の合唱団生活終了からXX年以上を経て,ぼつぼつ体のあちこちがうずく,誰かに習おうかな?と思っていた矢先。全く声を出したことがなかったのに,久しぶりの感動。
それから,某君のハナキンの「ベルさっさ」が始まるわけ。金曜は大抵都合が悪い。いろんなイベントがある,酒の誘惑もある。土日に出勤したくないので,仕事を片付けたい,家で仕事をするためにいろんな書類を鞄に詰めなければならない,パソコンも鞄に詰めて,,,それで,遅刻も頻繁にするわけです。遅れて到着するときの間の悪さ。我が親愛な団員の声を冷静に,客観的に聞くわけですが,スケールの半音づつ下がる奴の頭の音さえ合っていない,...なんてひどい音なんだ。do
si la sol la si do...の半音がおかしい,よく周りを聞いて。また,テナーががなっている。ベースはいいが,そんなに頑張らなくても,セカンドはいつも人数は多いが自信がない,我がバリトンは某君が遅れて到着なので,消え入るような声。(人数が極端にアンバランス)
まあ,大町さんも大揚なものです。大町さんは専門の指揮者じゃないが,彼が振ると,みんなちゃんと棒を見ている,大きい体を見ている,振りが大きいから見なくてもみえる。自然と上手く歌える。「アインザッツ」も,スフォルツァンドも何にも心配無い。あの素敵なStandchenも再現した。「柳川」はまだだし,「ピエロ」もまだ。Negro
Spirituals もまだ。山田耕作もまだ。多田武彦もまだ。すべてはこれから。
大町さんの構想は,指揮者に岩城宏之さんを迎えて,彼に自由に振ってもらって歌って行けるような合唱団にしたい,....そりゃ,誰だってそのようになりたいと思いますよ。
しかし,かっては見ず知らずの我が団員達,酒を呑みながら話してみると,何と境遇の似ていること。なんと家族全員が音楽に関係している人が多いこと,戦前「軟派」と云われ,終戦後jazz
を始めた人,合唱団を結成した人,などなど。多士才々,硬派な会社人間と対照的な軟派人間ばかり。合唱団を週に3つばかりこなすOB(それでも男声合唱団はこれだけ),現役なのに仕事をせず,奥さんと一緒にこれも週に3つ掛け持ちをする人,サックスを吹く人,などなど。
いわば,軟派人間万歳!! 俺達ゃ硬派じゃないよ。 はもろうが,はもるまいが,気にしない。 「帆船日本丸」専属の男声合唱団として,各種のイベントに出演することを夢見て,家で発声練習,コーリューブンゲン(いやだな),コンコーネ(これもね),その内ボイストレーナに付かないとついて行けなくなるかも知れない(元々そのように考えていた),入れ歯を入れても歌えるかな?(ドイツ語などとくに大丈夫かな),いつまで声がでるのだろうか? などなど心配の種は尽きないが,「横響と第九を歌う会」会員募集のお知らせに心が動く,「メサイヤ」を歌う会もあるな,混声合唱は余り魅力的でないが,,,元々優柔不断。(jazzをやっている奴らはうらやましい)
ということで,30年ぶりに再開し,ちょっと興奮気味のバリトン某君のお話でした。(もしご興味のある方,毎週火曜日の6:30〜8:30頃,桜木町に来れる人が居られれば,是非ともご参加下さい。)
元バリトン,現バリトン 某 (数年前に記したエッセイが見つかりましたので載せました。練習日だけは変更になりました。)
合唱に関して:
合唱とは,全てのパートがメロディーを歌うのではなく,大部分がテナー部分がメロディーを取り,他のパートはその伴奏をする,組競技である。だから,声の高い人[ソプラノの人は除く]は,メロディーを歌えるから良いけれども,声の低い人,声の出ない人はメロディーを歌えないので気をつける必要がある。
それから,何でも同じであるが,団,会合の運営は参加者の権利と義務の上に成立っている。だから,このような団体の運営に興味を持たない人は,是非ともカラオケでストレス発散をお願いしたい。最近,カラオケは防音装置が完備しているから余り心配する必要はないけれども,バーやクラブでカラオケを歌う人は,自分の歌に関して十分なチェックを施してから発声されるほうがいい。怖い世の中であるから,どのような「いちゃもん」,「因縁」を付けられるか分からない。
その点,合唱団は安心である。一応,団のメンバーは自分はともかくも,他のメンバーがどのような音,声,奇声を発するかに関しては十分な準備が整っている。すなわち,万一変な声を出しても誰も叱らない。しかし,変な顔で振返られることは必須。[ウヒヒヒヒ....]