タカノリ君









 私が平日仕事を終えて帰る頃に、よく逢うオトコノコがいるのです。
 彼はタカノリ君といって、どうやら私の住んでいるアパートの近所に住んでいるらしいのですが、詳しくはよく知りません。知っているのは、名前と、高校生であるという事、それに散歩が好きだという事くらいです。
 タカノリ君はひょろりと背が高くて猫背気味で、丸っこい眼鏡を掛けていて歯並びが少ぅし悪くって、笑うと目がなくなってしまう、とても可愛い人なのです。
 いつも、電車を降りて帰り道を歩いていると、何処からともなくやってきて「カオリさん」と声を掛けてくるのです。
 私は大抵煙草を吸いながら歩いているのですが、タカノリ君は「カオリさんの煙草を吸う姿が好きなんだ」と言いながら、ちょっと背中を丸めて私の隣を歩き、他愛のない話を2人でするのです。


 「それじゃあ、煙草も吸い終わったから帰るね」
 「うん。じゃあまたね」


 そう言って、いつものように曲がり角の近くでタカノリ君と別れた直後の事でした。
 私の位置から3m程離れた所にある曲がり角の向こうで、キキキキキ―――ッという甲高いブレーキ音。
 続けてドンと何かのぶつかる鈍い音がしました。
 近いから、もう1本煙草に火を点けて見に行ってみようかとも思ったのですが、生憎と先程の1本が最後で、もう箱は空です。
 家まで1分も掛からないので、煙草も無くなった事だし帰る事にしました。



 それ以来、タカノリ君とは逢っていません。






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