戦後型高一ラジオ
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2004年4月製作

【使用真空管】 UZ-6D6、UZ-6C6、6Z-P1、KX-12F

【寸法】 幅360mm、高さ230mm、奥行190mm
(突起物含まず)

【材質】 シナ共芯合板、クリヤラッカー仕上

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今から20年以上前、当時住んでいた町に小さな電子パーツ店がありました。 そこの店先で、ある時、1個100円程度でトリオのコイル類がワゴンに入れられて投売りされていました。 それらの中から、RF付きの2バンドスーパコイルやIFTと一緒に買っておいたのが、今回使った高一コイルです。

箱の中には、当時のデータシートがそのまま入っています。トリオデータシートNo.2、1954年9月2日初版発行・・・ちょうど、50年前の資料ですね。 今年の4月は、ちょうど子供が生まれる予定月でもあったので、記念として、データシートに記載された回路で当時の高一ラジオを、ST管を使って再現してみることにしました。

実は、このコイルを手に入れた当時、今回使用した回路でラジオを製作してみようと思って部品集めに取りかかったのですが、うまく集まらないのでそのまま沙汰やみになっていたのでした。 真空管だけは手に入れたのですが、シールドケースなどは当時より現在のほうがずっと手に入れやすくなっています。

真空管は、データシートの回路では当時の教科書的な構成で、UZ-6D6(高周波増幅)、UZ-6C6(再生検波)、6Z-P1(電力増幅)、KX-12F(整流)となってます。 それに合わせて手に入れたのが写真の真空管です。すべて元箱入りの新品です。 当時はまだ、敢えてST管なんかでラジオを作ろうという人が少なかったためか、揃えるのに結構苦労した覚えがあります。価格は別として、手に入れるのは現在の方が楽かもしれません。

UZ-6D6、UZ-6C6は外国製で、それぞれユナイテッド・エレクトロン(米)とハルトロン(英)製。6Z-P1とKX-12Fは国産で、それぞれドン真空管製作所とNECの製造です。 UZ-6D6とUZ-6C6にはシールドケースをかぶせますが、外国製のこれらの真空管は国産のものより若干背が高いので、シールドケースもすこし背が高めのものを選んでこなければなりません。 最近あちこちで見かける中古のST管用シールドケースの中から、大き目のものを選んで買ってきました。

この他、2連バリコンはやはり中古でアルプスのB-23(ひょっとしたらB-27かも)です。トリマーもついています・・・が、後述するように、このトリマーは不注意で駄目にしてしまいました。 また、再生用の豆コンは、10年ほど前に内田ラジオで未使用のものが幾つか出ていたので、 その時買っておいたものを使用しました。

これらの部品を、まずはミズホ通信の並四用シャーシに組んでみました。バリコンには、やはり中古の糸かけプーリを付けています。 糸掛け用の軸は今ではまず手に入らないので、市販の軸受けと6mmの真鍮棒、4mmのEリングを使って作りました。 もちろん、旋盤なんて高級なものは持っていないので、電気ドリルと金切鋸、ヤスリを使って作っています。

回路は、トリオのデータシートそのままなので特にここには掲載しませんが、指定されている6451電界コンデンサはさすがに手に入らない(手に入っても50年前のケミコンはさすがに怖くて使えない)ので、 10μF+10μFのブロック電解とチューブラ型のケミコンで代用しています。

ダイヤルは、Illustratorで作図して、厚紙に印刷したものを貼り付けました。また、バリコンの軸に取り付けてある指針は、8mm(肉厚1mm)の真鍮パイプと2mmの真鍮棒で作りました。 黒く塗装してありますが、ダイヤル窓の内側に取り付けるものですので、特にサーフェイサなどでの塗装前の表面処理はしていません。

また、電源プラグではちょっと遊んでみました。カタログで見るとまだ現役のようなので、 レトロな松下電工のポニーキャップを電設資材店で注文して取り寄せました。 使うのは1個なのですが、箱単位でしか注文できないとのことで、10個単位での注文です・・・とはいえ、10個で900円ほどですが。

これに、コタツコードで御馴染みの、白黒の袋打ちコードを取り付けました。

ここまで出来上がると、いよいよ箱作りですが、工作しやすい9mmのシナ共芯合板を東急ハンズでカットしてもらって作りました。 表面は油性のウッドステインで着色してマットクリヤーのラッカーを吹き付けました・・・が、これはちょっと失敗でした。写真ではわかりませんが、あまり表面が綺麗に仕上がりません。 レトロな風合いを出すのであれば、シェラックニスをはけ塗りしたほうがよかったかもしれません。箱の上面には、折角の真空管を見て楽しめるように、アクリルで窓を取り付けています。

箱に取り付けるためのアクセントとして、真鍮板をエッチングして銘板を作成してみました。 旧字を使っているのはちとやりすぎかな。新字・新仮名遣いになったのは終戦後すぐのはずです。

最後に、製作した箱にシャーシを入れて完成です。後のメンテナンスを考えて、シャーシは木ねじを使わず、箱に鬼目ナットを打ち込んでビス止めにしました。

ところで、シャーシを箱に入れる前、最後に調整をしているときに、バリコンのトリマーのネジをひとつ、馬鹿にしてしまいました。 元々、ベークライトに雌ネジを切って作ってあるトリマーですので、あまり廻し過ぎるのは良くないのですが、ベークライト自体が古くなっているので想像した以上に脆くなっていたようです。 ともあれ、ネジ穴が馬鹿になってしまってはトリマーとして役に立ちません。 で、ラジオデパートの桜屋電機さんで小型のトリマーを買ってきてバリコンに外付けしてみました。

結果は上々で、ちょっと目には元からついているトリマーのように見えます。ちなみに、このトリマーは容量が80PFで、本来のB-23のトリマーより容量を大きくしてあります。 バリコン自体、古くなって全体の容量が不足気味ですので、ちょっと大きめにしてみました。

なお、ダイヤル目盛は実測値で付けたものではなく、535KHzを0度、1605KHzを180度としてその間を波長直線になるように計算したものです。 なので、完全に目盛を合わすことはできません。 ニッポン放送(1242KHz)でちょうど合うように調整したときに、NHK第一(594KHz)で約15KHzの誤差が生じています。

完成後、女房が「コードがコタツみたい」と言うので、京都のタチバナ商会さんからエンジ色の袋打ちコードを取り寄せて付け替えました。 送料も入れると10mで3000円と、普通の袋打ちコードと比べるとちょっと割高です。しかし、コタツコードよりはぐっと風格が出ます。

さて、肝腎の性能ですが、さすがに高周波増幅段のご利益で、2mほどのビニルコードをアンテナにしただけで地元の放送局はほとんど受信できます。 また選択度も、複同調の効果で、5球スーパほどとは言いませんがまったく問題ありません。糸かけダイヤルのプーリにかなり大きめのもの(直径10cm)を使ったので、 減速比が大きすぎるかな、と思っていたのですが、実際はこれでちょうどよいくらいです。

しかし、久しぶりで中波放送をじっくり聴いたのですが、ノイズがすごいですね。最初は内部の雑音だと思っていろいろチェックしたのですが、どうやらADSLなどの ノイズを思いっきり拾っているようです。ADSL関係者のなかには、中波放送やISDNと相互干渉するということで、「中波放送やめろ」「ISDNやめろ」とまで言う人もいるようですが・・・

(2004年7月9日記)

[追記]
高周波増幅段の6D6のカソードには、ゲイン調整用の10KΩのボリウムが入っています。 以前、ラジオ工房さんの掲示板で、本来ここにはCカーブのものを使う、とのアドバイスを頂いていました。 ただ、既製品のCカーブのボリウムとなると、滅多に見つからない上に、今回のラジオでは電源SWも兼用してるため、S付きのものが必要になります。

こうなると、まず、入手は望み薄です。東京コスモスさんのWebサイトでは、製品としてはCカーブ・S付きのものもラインナップしてありますが、当然受注生産です。 駄目元で東京コスモスさんに照会のメールを出してみましたが、「メーカでは直接注文は受けられないので代理店の方へ」と取り次ぎの商社さんを紹介されました。 1個の注文はまず受けてくれないだろうな、と思いつつ、ラジオデパート2Fの山王電子さんで入手した Bカーブ・S付き(RV24YNME B10KΩ 0.25W)のものを使っていました。

ところが、山王電子さんで、たまたま前述の経緯を話してみたところ、「うちも代理店だから注文は受けるよ。ただ、1個だと相当に高くなるのは覚悟してもらわないと」 とのことでしたので、まずは見積もりを取ってもらいました。

その結果、大体4千円ちょっとで、納期1ヶ月半以上、とのことでしたので、取り敢えず注文してみることにしました。

通常、秋葉原でよく見かけるRV24ではなく、RV30の、それもS付きですので、もともとちょっと高めです。しかし、特注なのでさらにその4倍位の価格になります。 ま、それでもオーディオ用のアッテネータに比べればまだ安価ではありますが。(笑)

注文したのは6月の初めでしたが、先週、ようやく入荷したとの電話があったので、早速引き取ってきて高一ラジオのボリウムと付け替えてみました。 最終的な価格は\4,350(税別)でした。

このボリウムの正式の型番はRV30YNSE 25S C10KΩ(C103)です。25Sはシャフト長と形状ですが、特注だとこのあたりは自由に設定できます(既製品だと20Sあるいは40Sのものが多い)。今回は、豆コンのシャフト長に合わせて、 つまみの高さに差が出ないようにしました。

ミズホ通信の並四用シャーシのボリウム取り付け穴は、RV24だと回転防止の突起の位置が合わず、穴の大きさを調整する必要がありますが、RV30だとぴったりです。 また、端子の方向も都合よく内側を向くようになります。 写真はRV30を取り付けたところです。比較のため、取り外したRV24も下に置いてあります。

Bカーブのボリウムと比べると、やはり違いははっきりわかります。 Bカーブではボリウムを半分以上回したところからが調整範囲になっていましたが、Cカーブだと全体の1/4あたりから回しきるまでが調整範囲になります。

また、0.8Wなので、安心感もあります。 もう少し、安く調達できれば申し分ないんですけどねえ。

(2004年7月28日記)



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