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34年前の遺恨を晴らそう!
~ バンダイ 1/144 ν(ニュー)ガンダム 旧キット改造 ~
1/144 RX-93 νガンダム フィン・ファンネル装備型
今を去ること34年前。1988年のこと。劇場映画「逆襲のシャア」が公開されました。内容は濃くて心に棘が刺さるイラッとする映画でございました。
余談だけれど、イラッとしたのは2点。一つはガチャガチャした展開。新作映画なのに、テレビアニメの総集編みたいな演出にイラッとした。この感覚は三年後の劇場映画ガンダムF91でも繰り返される、同じ監督に共通する、オブラートに包んで言えば作風なんでございますけれども。
もう1点は落下するアクシズを食い止めようと、どいつもこいつも寄ってたかって正面から減速をかけようとしていた事。少なくとも画面上の構図からはそう見える事。
アムロ先生ナニやってんスか。正面から押し返して減速かけたら落ちるじゃないスか。
監督さん子供の頃から宇宙が大好きだそうですが、脱出速度を減らしてどうする。斜め後ろから加速をかけなくっちゃ、逸れて行かないことくらい、判っていたでしょうに。
見た目の分かりやすさを優先して、観客の子供に間違ったことを教えようとした? 観客バカにしてんのか。
ロボットアニメだからこそ、ファンタジーだからこそ、正確な考え方を子供たちに示す義務があるでしょうに。でっかい岩を軌道から押し出すにはこういう風に考えるんだよ、と、正しく子供たちに示すべき義務があるはずなのに。そしてそれをよく知っているくせに。
宇宙と物理の知識があるにも関わらず、わざと見た目でわかりやすく、誤解が広まるように演出したのだとすれば、それは演出家の犯罪です。
この煮え切れない科学演出が、ひっっじょう~に残念でイラッとしたものでございました。なんだかんだ、私はこの監督さんに大きな期待をしている身なんでね。
閑話休題。
それはともかく、この劇場映画に登場するMS達も、当然のようにプラモデルが発売されました。いくつか買って作りました。一部にネジ止めの機構を採用するなど意欲的なキット設計で、プロポーションや関節の可動にいずれも少々難点のある出来栄えでしたがしかし、主人公機のν(ニュー)ガンダムは大きな問題のない優れた出来でございました。
ところが、いざキットを仮組してみると、そもそもそのデザインに気になるところがいくつもあって、そこがどうしても嫌だったので、あちこち改造を始めてしまいました。
ガンダムの世界を継承しているはずの世界観を持ち、以前の続編で平然と用いられていたエルガイムの二重関節をやっと廃して、ガンダム世界本来の単関節に戻ったデザインなのに、
肩に二つのロケットノズルがついていやがる。MSにはネェよそんなものは。取りたい。
なんか太ももの裏がクニャッと力なくえぐれている。ひょろい。太くしたい。
太腿が左右に回転しないのでポーズが堅苦しい。関節を仕込んで足全体を左右に開脚させたい。
足首の甲に謎の小さな装甲がある。ナニをカバーしてるンだそれは。要らネェ。
ふくらはぎ後部のノズルカバーが異様に長い。邪魔。切り詰めたい。
膝関節の前後にあるパイプが細すぎるので当時流行っていたモビルスプリングに変更したい。
そんな感じで、せっかく単関節を採用して一年戦争時代のMS風味を持ち直したのに違和感のあった部分を改造し始めました。
切って削って埋めて、関節を仕込んでヤスリを掛けて・・・・・・
そして心が折れた
いやなんでやねん。ワカリマセン。
突然やる気を無くして34年。さん、よ年じゃなくてさんじゅうよ年。
塗装を目前にして、一部の部品はサーフェイサーまで塗ったのに。ついに完成させなかった。
そうして長い年月が経つうちに、部品が散逸しました。6つのファンネル付きのキットなのに、ファンネルは2つしかない。シールドの固定具が見つからない。ランドセルのビームサーベル・ラックも無い。両の手首も見つからない。ますますやる気を失って完成しない。
時折取り出して眺めたり、ちょっとだけ進めたりしても、どうしても完成させる気になれない。そのうちにそれは立派に化けて、心残りから恨みにまで堕してしまいました。立派な遺恨の出来上がりです。もろもろの恨みつらみを身に纏い、遺恨と化した亡霊が、棚の上でホコリをかぶって眠っていたのでした。
心に棘のチクリと刺さる、自らが自らに残した遺恨となって。
そんなこんなで34年。Vtuber中島ぺぺろのプラモ配信のおかげで、ついに箱につもった分厚いホコリを払い、無理やり完成させる気になったのでした。
ホコリと一緒に積もり積もった、作品と共にこのMSのデザインに感じた長年の遺恨を晴らすために。
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赤子が中年になるほど放置されたパテ埋め箇所を削ります。
ある程度進めていた部分の他にも削っていない部分や、まだパテを盛っていない部分を見つけては盛って削って、削って盛って、を繰り返します。
太腿の回転箇所はポリキャップとプラ棒で関節軸を増設してあったので、太腿の裏にパテを盛って整形。
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背中のビーム・サーベル・ラックは先端部分が紛失していたので、絵の具のチューブの口を切り落として、良い感じに無理やり接着して本体にサーベルの入る穴を開け、強引にサーベル・ラックとして代用します。
足の甲は中央部を削ってパテで均して旧ガンダム風に。
つま先の先端のフック部分もパテ埋め。MSには無いパーツだから。
腕のビームサーベル・ラックも先端部が紛失していたので、プラバンを張り合わせて自作。なんかガチガチの形になったけどまぁいいや。
その他諸々もパテ埋め・削り込みで整形して、ふくらはぎ裏のクソ長いノズルカバーを切断。こうしたかった形を現実にしていきます。
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整形が終わったところで部分的にサーフェイサーを塗って下地を作ります。
手首のパーツには百式の予備キットに犠牲になってもらい、シールド取付具もないのでこれはF90のキットから拝借します(あとで返します)。
洗濯ばさみを改造したクリップで固定しながら34年前のサーフェイサーを塗ったパーツの隣に、新しいサーフェイサーを塗ったパーツが転がっており。歴史の混沌を感じます(なにが)。
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そして塗装を開始。試作機の感じを出したいのでひとまずアクリル・ガッシュの銀色を塗ります。
頭部を銀色ベースで塗ってみたところ、とても金属的な良い感じになったので、銀色とグレイの塗装を思いつきます。ひとまずこの感じで塗装テスト。顔は ν(ニュー) ガンダムカラーではなく、鼻隠しと頭頂部メインカメラの赤い、そして目の黄色い初代ガンダムカラー。銀だけど。
余談ですがこの写真、映画のタイトル部分でペロリと布をめくられて顔を見せた ν(ニュー) ガンダムのカットに構図がそっくり。意図しました。この顔のほうがガンダムだよねぇ。個人的に。
銀色とグレーの差があまりはっきりしないので、せっかくの銀色が映えない。
渋いッちゃぁ、滅茶苦茶に渋いけど、渋すぎてヒーロー感がイマイチ。
グレーがずっと暗ければ映えるのでしょうが、ダークな機体にする意思はないので考え直すことに決定。
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そこで悩んだ末、白と銀をベースにした塗装をすることに変更。
ガンダム1号機のロールアウトカラーのような感じを目指し、金と赤を差し色にすることで全体を引き締める色設計を考えます。
膝関節の前後のパイプパーツも、懐かしのモビル・スプリングに変更しました。
色合いも相まって凄い金属感。
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そして完成。全部、筆塗り。
勢い余ってライフルの上に、FGガンダムから剥ぎ取ったした初代ガンダムのライフルのスコープを溝を掘って強引に移植しました。
ライフルの色も初代ガンダムの塗装指定にあったミディアム・ブルーで塗って初代の世界観を色濃く継承。すると思ったよりはるかに凄まじいインパクトが発生して、強烈な初代ガンダム感を演出してくれました。あらびっくり。
やはりなんらかの印象には「共通する鍵になるもの」が存在するのだ、ということがこの一例からもわかりますね。ガンプラだっては配色設計の勉強にちゃんとなる。
シールドは腕に固定できないので、左手首に差し込んで持っています。古典的。
ファンネルは数が足りないし固定パーツがないので二つ連結して背中にブッ刺してみました。二つしか無いのでビームバリアは作れません。根性でガンバッていただきたい。
シールド裏はプラ板で塞ぎ、黒く塗った上で先端のミサイルを白・グレー・赤で塗って非常に目立つ形に。表からは見えませんがこれも存在感バッチリ。
左腕にあったサーベル・ラックは、左手でサーベルを使えるように、と右腕に移植してあります(左右交換しただけ)。間違いじゃナイヨ。
改造箇所は思ったよりずっと効果があって、初代のMS感をたっぷりと醸し出してくれています(自己満足)。
特にふくらはぎ裏のラインがノズルカバーの短縮化でマイルドになったのが旧ガンダム感ググッとアップ。オイシイ。
そこへファーストのスコープを移植したライフルが強烈な存在感を放って旧ガンダム世界感100点満点。オイシイ。
シールドが腕についておらず、手に持っていることで正面に向けることが出来、結果的に旧ガンダム感がまたアップ。オイシイ。
てなわけでMSV感満点の不思議な ν(ニュー) ガンダムが完成しました。初代ガンダムの独特な作動音が聴こえてきそうな大満足の出来映え。
まさに、こういう完成品を作りたかった。34年の刻を超え、はるか昔にやりたかったことをついに達成できました。人間、諦めちゃアカン。
腕は悪いが気にするな。
34年も寝かせているうちに、新製品が出るわ出るわでこのキットつくる人なんかいやしねぇ上に福岡に実物大立像が建っちまいましたけれども。時代は変わったねぇ(遠い目)。私の時代は少しも変わっていないまま、34年が過ぎましたがね。
34年の昔から蘇った白い亡霊、ここに立つ。やってやったゼ。
大満足。
2022.12.24
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