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つくづくやなタイトルだなぁ


わんわんかぷっ!


  以前、バイクに乗った紙っぺらの運送屋さんをしておりましたが。この商売(いわゆるゆーびんやさん)をしていると、仕事柄たまにわん公に「かぷっ」とヤラレることがありましたな。
  つまるところ噛まれるわけなんですが、田舎でこの仕事をしておりますってぇと犬を放し飼いにしている家がたまにありまして。飼い主曰く、「ウチの犬は噛まないから大丈夫」と、たいがいは口を揃えて言うんですが、そりゃあ犬っころのことですからわかりはしません。
  確かにえらくおとなしく、郵便屋がバイクで庭先に入っていっても、吠えもしなけりゃ動きもしない犬、ってぇのもいますけれども、そういう犬はたいてい飼い主がきちんと鎖につないでいる。まぁそういう犬は撫でてもらいたくていそいそと寄ってきたりとなかなか可愛いんですが、放し飼いになっている犬にはそういうおとなしいのは少ないですな。
  田舎のことだけに、必ずしも家に門扉があって敷地が囲まれているわけではなく、すごい家になると四方あけっぴろげで建ってたりしますけれども、まぁたいていはデカイ門が開けっ放し、あるいは生け垣はあるが門はなく、出入り自由と言った程度の家が多い。
  そういう家や、あるいは敷地の三方にに有刺鉄線を張っただけの小さな事業所なんかに放し飼いの犬がいますってえと、これが当然出入り自由。門から敷地の外にでてくる犬は少ないんですが、中には走り去る郵便バイクを追いかけて、文字通りドッグ・レースを挑む犬もいたりなんかします(私には経験ないんですが、大きな犬になると風のように追いついてきて、しまいには追い抜いていく豪快なヤツがいるそうです)。
  彼らはたいてい郵便屋のバイクがお気に召さないらしく、バイクの排気音がしますとすっと立ち上がり、放し飼いですから入り口から狩猟の勢いで吠えまくりながら突っ込んでくるのもいますけれども、たいがいは唸りながら遠巻きに警戒している。これがバウバウと吠えながら追いかけてくるのには、実はパターンがあります。
  前述のように最初から攻撃的に接近してくる犬もいるんですが、まずたいていは、ポストに近づく郵便屋には警戒をするだけ。吠えはしても、アタックしてくるのは少数です。これが攻撃に転じるのは、たいていポストに郵便を納め、くるりと犬に背を向けた時。
  バイクに乗るまでは近づいてこない犬も、バイクが走り出すとすかさず追撃に転じるタイプが多いようです。
  犬というのは、「追いかけるもの」なんですね。放し飼いでなくとも、郵便屋には吠えるものと心得ている犬はたいがい、去り際にひときわやかましく吠えるものです。入ってくるときには吠えない犬でも、去ろうとするとギャンギャン吠え始めることが多い。郵便屋というのは犬に吠えまくられるのが仕事のようなもので(違うけど)、たいていはこの犬の習性を理解しており、放し飼いの犬や、ポストのすぐ下に鎖でつながれた攻撃的な犬のいる家(あるんですよ、そういう家)では、犬に背を向けるときに十分注意を払い、かぷっ攻撃を回避できるように計算して動くんですが、たまにこれを怠ったり、犬に気づかないでいるとかぷかぷ噛まれることがあります。
  私もこれで最近やられたクチでして。
  とある運送屋さんの敷地で、ポスト代わりのカラーボックスに郵便を届けた際、駐車していた数台のトラックの内の一台の下に、息を潜めてチャンスをうかがっていた放し飼いの犬に気づかなかったんですね(まったく見えませんでした)。これが去り際、気づかないまま目の前を通り過ぎたときに、疾風のごとく飛び出してきて、ものも言わずに(犬だから言いませんが)
  「ガブ」
  とやってくれました。その瞬間までまったく吠えなかったところを見ると、確信犯で最初からかぷ狙いだったようですね。小型の犬でしたのでたいした怪我ではなかったのですが、たまたま薄手のものを着ていたので小型犬の割には案外強くやられました。
  仕事柄、それまでにも何度か犬に噛まれたことはあるのですが、あれはまるっきりふいを突かれたので驚きました。慣れない地域だったのでその家に(家じゃないけど)犬がいることすら知らなかったので警戒もなにもしていなかったため、うかつにもかぷっとやられたわけです。
  たいがいの犬は軽く噛むだけですが、中には本気で牙を食い込ませてくる大型犬もおり、血塗れになった年輩の同僚も見ていますし、狂犬病にかかって入院した郵便屋の話も聞いていましたから、この時も含め、何度かのかぷっ!で私が軽傷で済んできたのは幸運だったと言うべきでしょう。そのどれもが後ろを見せたときに噛まれていますので、放し飼いの犬を見たら、後ろを見せたときに気をつけるべきでしょう。まるきり背中を見せるのは、危険です。
  さてわんわんかぷっ!が起きると、放し飼いをしていた家は犬を鎖につなぐのかというと別段そういうわけではなく、一部を除いてたいていは放し飼いを続けるようです。自分の身は自分で守るしかない、というわけですね。
  ちなみに「ウチの犬は噛まないから」と言っていた飼い主は、かぷっ!後にどう言うのかというと、たいてい
「ウチの犬は、普段は噛まないから」と主張するんですから、世の中には理解の及びかねる人がぎょうさんおります。
  犬というのはそれぞれに独自のテリトリーという意識があるようで、このテリトリーに侵入するものは、理屈を越えて敵と見なす場合があります(犬にも犬の論理があるのでしょうが、それは人間の論理とは一致しません)。つまり噛まない犬も、ある場合には噛むことがあり、それは人間にはまだ十分には予想しきれない、ということのようですね。実際、おとなしい犬に突然噛まれた人も、ちゃんといます。攻撃したとかではなしにね。
  犬は噛むものであり、どのような場合に噛むかは、人間には予想しきれませんので、犬を放し飼いにしている方や、人に近づける状態に飼っている方は、「噛むこともある」ことを、知っておいておくんなさいまし。
  犬には愛を、でも、ゆーびんやにも愛を。
  少しでいーです

(2001.Mar.15)




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