※この時期の文章は表現が暗〜〜く硬〜〜くなっております。ご了承ください。
八月になると一面の田んぼの稲の穂がだんだんと実を膨らませ始めていて、ほとんどの田では稲が頭を垂れ始めている。水草の繁殖していた田んぼも含めて、今年の生育はおおむね良いようで。
ただ、最近起こった風雨で、田んぼの一部で稲が根こそぎ倒れてしまった様子の見られるのだけが痛ましい。誰も起こしに来ないけれど、あのままでは陽が当たらずに生育しそうもないように思われるのだが大丈夫なのかしらん。気になる。
それらを眺めやりながら歩く川べりの道で、砂利とふわふわした草むらの道を、無数の蟻が行進しているのを見つけた。
こちらはゆっくりと往復して歩いているのに、何度通りかかっても、いつまでたっても、行進が途切れない。
興味深々によく眺めてみたら、蟻の軍団はあちこちを迷走しながらうろうろ、うろうろ、しばらくかけて長い距離を進軍した後に、どこといって変わりもない草むらに隠れた、7ミリくらいのやや大きな蟻の巣穴に到着したとたん、そこへ潜って行くのだった。
と思ったら、次から次へともぐりこんだ蟻がみんな、白い小さな細長いものを口にくわえ、身体の下に抱え込むように穴を出て、今来た道をまっすぐに戻り始めた。
すわ強奪 !? と思ってしつこく眺めていたら、うじゃうじゃと戻り始めた蟻軍団は、私の足で約四十四歩行った所で、道の真ん中の、別の草むらに潜り始めた。
よく見るとその草むらの中には、1センチほどの蟻の巣が口を開けていた。蟻たちは運んできた白く細長いものをくわえたまま、その巣穴に次々と潜っていくのだった。
後を見ると蟻の軍団の黒い列が、白いものを抱えたまま延々と続いている。みんな白い細いものをくわえていて、集団輸送作戦にしか見えない。
これはもしかして引っ越しなのだろうか。それとも強盗なのかしら。
引っ越しだとしたら面白いものが見られた、幸運だというところだが、強盗の目撃ではそうも言っていられない。
調べてみると、これはサムライアリという蟻が、他の蟻の蛹や幼虫を奪って、奴隷にするために運んでいる光景なのだそうだ。
強盗だった。
引っ越すこともあるのだろうが、この場合はどうも卵や蛹の強奪らしい。
してみるとのんびりともしていないし、少しも微笑ましくない。貴重といえば貴重だが、あまりうれしくない。
しかしながら考えてみると、彼らには彼らの世界があるのだろうし、悪いと言ってもそれはヒトの考え、蟻にしてみれば世の常ということに思い至る。
クワバラクワバラ。南無観世音菩薩、と唱えてから、なるほど、人はこういうときに祈りたくなるのか、と納得した。
(2015/08/20) (2019/04/14 一部改稿)
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