男はアイロンに触れるべきである。
男も家事を嗜むべきだとか、アイロンがけの一つもできなくてどーする、とかゆーのじゃなくて、単に、楽しいからである。
アイロンがけは、オモシロイ。いやほんとに。
しかし毎日せっせとアイロンがけをするというのは誠に大変なので(主婦の皆さんはタイヘンだ)、ここは一つ、私服の裾上げを試してみていただきたい。
そう、裾上げだ。洋服を買ったとき、たいていはその場で店員さんに「コレっくらいで」と頼んでしまう、アレである。元来裾上げというのは手縫いなり、ミシンなりを使ってちくちく、だーっとやるものらしいのだが、そういう難易度の高い技はひとまずおいて、最近は裾上げテープなる物が出回っているので、とりあえずはこれをやってごらんなさい。そこそこ簡単にできるんですわこれが。
これが、アイロンを使う。なに、ズボン(最近はスラックスと呼ぶのかもしれん。つまり洋袴のことだ)全体にアイロンをかけるわけじゃあなくて、ひっくり返して裾を止める裏側の部分に、横向きに滑らせるだけだからカンタンだ。わたしは最近
これに挑戦して、すっかり御満悦だったりする。オモシロイ。
アイロンというのは要するにニクロム線であっためた鉄板であるから(火事には気をつけてね)、これが単に服の繊維をあっためてクセをつけてゆくだけの話なのだが、この作業は妙にオモシロイのである。黙々とやっていると、なんというかランナーズ・ハイのような静かな集中状態に陥って、ちょっと我を忘れる楽しみがあったりするんですな。(その状態を面白いと思わない人には、面白くも何ともないのかも知れないが)
けっこうハマルもんがあります。(いや、別に面白がってそこいら中のズボンの裾を上げちまったりはしちゃいないんすけど)できあがったズボンの裾がきれーに短くなっているのを見たりしますってえとなかなか嬉しい。ぜひお試しになるのがよろしい。なんか恥ずかしいぢゃん、とゆー方は家人のいないスキを見計らってそ〜っとやってみればオッケー・ノープロブレムです。(ただし火事には十分きをつけて。アイロンの始末にはしつこいほど注意を払いましょう)
わたしも裾上げなんぞやったこたぁありませんから、最初の一発目は「裾を切ってからやるのだ」ということを知らず、綺麗に縫い取りのされた裾をそのまんま裏返して、やたら高い位置に止めようとしては、布地の重さに裾上げテープが根負けし(根性のないヤツ)、足を抜き差しするたびにぼーろぼろと剥がれてゆくといった失敗をいたしましたが、2回目からはもう大丈夫。きちんとクラフトチョキで適切な長さに切断し(布鋏でやるんだっつーの)、裏返してはまず折り目にアイロンを載せて形を整え、しかるのちに軽く濡らしてしぼった裾上げテープをじっくり溶着させる、といった高度なテクを身につけて、それはきれーな裾上げに成功するようになりました(^^)
30男がアイロン台の上でこー、「じゅっ」とアイロンがけをしている様はおそらくマヌケなんでしょうけれども、しかしこれはなかなかにオモシロイ。あの裾上げテープってやつぁ熱で溶ける糊の面積がえらく少なくて(ケチ)、これでいったい丈夫に使えるもんなんだろうか? と心配になるほどですから、中温度に熱したアイロンを載せていても、「これくらいでいーんだろうか? いやいま離したらもしかして溶着が不十分なのではなかろーか? でも当てすぎると焼いちまうしなー」とスリリングな緊張感が味わえますし、溶着を確認した後、十分に冷まして仕上がりを待っているときなどはいっぱしの洋服職人になったようななりきり気分が味わえます(←古い)。
もっともわたしはまだ修行が足らず、ちょうど折り目の部分が、裏返して裾を折り、接着した祭にきっちりとは重ならず、裾上げテープ溶着時にほんのすこしズレが出てしまったりしてしまいまだまだです。溶着完了後のアイロンがけで無理にごまかしてはいるものの、やはり何事も段取りは最初が肝心、折り返してアイロンをかけた際にきちんと型を合わせておかないとぱーぺきにはならんようです。(違うのかな。よくわかんない)
ともあれこれは密かな発見でありましたぜダンナ。てなもんでひとつ、ものは試しにやってみてはいかがですかね、御同輩。
オモシロイすよ(イヤ、ほんとに)。
ひそかに、さくっと。
(しつこいよーですけど、火事には気をつけておくんなさいね。鉄板の部分が冷めるまで、アイロンの近くには燃えやすい物を置かんよーに)
(2000/10/27)
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