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小見出しでいす
  飛行機はこうして飛ぶ、らしい

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改訂版  (ゲームとはいえ)
飛行機はなんだって空を飛べるのか?


  以前、このコーナーには「飛行機はなんだって空を飛べるのか?  お手軽版飛行機の浮上原理」というテキストがあって、図書館で借りた飛行機の操縦教本から学んだ揚力の原理を紹介しておりましたが。
  ある日、ナントカさん(名前がワカラナイ)からメールをいただいて、「ベルヌーイの定理についての説明が間違っとるがなアンタ」というご指摘をいただきました。
「え、そーなの?」
  というんでビックリして調べなおしてみると、アチコチでなんかいろんな説明の仕方がされていて大混乱。しかし、いくつかの流体力学の本を読んでゆくうちに、なるほどわたしの書いた文章には、間違っている箇所があることが判明しました。  二つに分かれた流体が後方に同時到着するために、という点がマチガイ。  ご指摘ありがとう。
  というわけで、以下の文章は改訂版となっております。以前の文章を読んで「そーなのか」と思われた方、ウソ書いちゃってごめんなさいね。
  以下、改訂版でございます。

  フライトシミュレーターを飛んでみてまず最初にわたしがおもったのはこのことでした。理屈から入るヤツなんですねぇ、わたしは。ともあれゲームとはいえ、このフライトシミュレーターは現実を再現する「シミュレーター」、飛行自体も、演算する対象になる現実の原理を持つものなわけです。そこで不思議。
  いったいなにがどうなって、飛行なんてことが可能になるわけ?こいつらはなんで飛んでるの?
  てなわけで調べてみました。何冊かの本を読んでみたところ、どうも本によって飛行の根本的な部分の記述が一定しないのですが、どうもいくつかの考え方があるようです。

1.ベルヌーイの定理による説明

  定説となっているのは、
  "翼の上下を流れる風の圧力の差によって、「翼が押し上げられて」飛んでいる"
  ということのようです。飛行の原理というか、空中浮上の原理ですな。しかしこの原理こそ、飛行機の上昇だけでなく、プロペラの推進力、エルロン(補助翼)による機体の傾斜、ラダー(方向舵)による機首の回頭をすべて説明する基本原理なのです。(と書いてあった)
  

  まず、飛行機が浮上できるのは翼のあるが故です。翼のない飛行機は、飛びませんな。ロケットなんてのもありますが、あれは文字通り爆発的な推力で重力を振り切っている。しかし飛行機は、翼にあたる風の働きで、空中に浮き上がっています。
  もちろん、ドライヤーの風を当てたって飛びやしません。フライト・シュミレーターで飛んでみてもわかりますが、飛行機は相当な速度を出さないと浮き上がってくれません。つまり翼に、スゴイ勢いで風の当たることが浮上の条件なわけです。
  では翼にスゴイ勢いで風が当たると、どうして飛行機は浮き上がるのでしょう?
  
  まず考えるべきはというと、空気のことなんですな。
  空気には、圧力があります。気圧、というやつです。空気には外に広がろうとする力があるわけですな。
  では風には、というともちろん圧力がある。しかし風には、静止している空気とは圧力の働きに違いがあります。風には、静止している空気と違って、もう一つの力が同時に働いているからです。
  それは「運動エネルギー」。

エネルギーの振り子

  風というのは、速度を持った空気と考えて良いようです。速度がある、ということは、運動エネルギーを持っている。そして運動エネルギーと圧力には、振り子のような反比例の関係があります。
  運動エネルギーと圧力の和は、常に一定である、という関係です。
  風、というと漠然としていますが、流れている空気流の一部分を、流体要素として取り出した場合、その部分の中で運動エネルギーと圧力の和は、どちらかが変化しても一定になる、ということです。和は一定なので、流体要素として取り出した流れの一部分で、速度という運動エネルギーが増えれば圧力が減り、運動エネルギーが減れば圧力は増大する、という関係が成り立ちます。
  ここが肝、なんですな。
  そしてもう一つ。

上を向いて飛ぼう

  飛行機の翼をよく見ると、翼は、機体に対して水平にはなっていません。たいていは前が丸っこくて、後ろが薄くなっていて、横から見ると、前が少し上向きに取り付けられています。後ろが下がっているのです。アバウトな図で恐縮ですが、(↓)こんな感じで。赤い線が水平線でござりまする。




  これも肝、なんですな。この角度が重要で。形も計算や試行錯誤の結果なんでしょうが、なにより少し上向きに取り付けられている。そこが肝。ライト兄弟のフライヤー 1号も、形こそ多少違いますが翼は上を向いています。
  んでこの上を向いた翼に風が当たりますと、(音速よりずっと小さい速度領域に限るそうですが)翼の上下に速度差が生じる。
  再びアバウトな図で恐縮ですが、風洞実験装置かなんかにこの形の上を向いた翼を入れ、風にパラフィンの煙やら水素気泡やらなにやらで流れの目に見えるような仕掛けを施して計測をしますと、風が十分に強いとき、(↓)こんな感じで翼の上下に空気流の速度差が観測されます。




     計ってみると、翼の上を流れ落ちて行く風の速度は、翼の下を流れすぎて行く風よりも速度が速いのだそうです。
  この速度差の生じる理由については、翼周りの定常流れに循環流れのベクトルが加わって生じるのだとか、境界層から剥離した渦が翼末端に生じるからそうなるのだとか、そんなようなことが本に書かれておりましたが、どうもこの点はよくわかりませんでした。
  しかし計測すると風の速さは翼の上下で異なっている。
  この形の上を向いた翼だと、翼の上面の方が、風の流れが速くなるんですな。
  そこで第一の肝。
  風の流れの一部分を切り取ると、その部分の圧力と運動エネルギーとは反比例の関係にあり、二つのエネルギーの総和は一定である。
  翼の前では、風の中の二つのエネルギーが、ある状態で安定していたとします。そして風が翼の上下を通り抜けるとき、翼の上を通る風は速度が増す、つまり運動エネルギーが増える。すると反比例の関係にある圧力は減る。
  圧力とは、この場合翼の上面にかかる力と思ってください。翼の下を通り抜ける風からも、翼の下面にやっぱり圧力がかかっている。しかしてこちらは、翼の上面を通る風よりも圧力が減少していない。つまり翼の上下に風から与えられる圧力は、下面の方が上面よりも強いわけです(↓下図)。




  少し上を向いた翼の上下を風が通り抜けるとき、翼の上に下向きに加わる圧力は、翼の下に上向きに加わる圧力よりも弱くなる。
  この星の上には重力が加わっておりますから、翼の上には、下向きの風の圧力+重力という下向きの力が働いている。そして翼の下には、上向きの風の圧力が加わっている。
  この圧力は、風が強ければ強いほど大きくなります。風が強いほど翼の上下での速度差も大きくなるので、翼の下には、風が強いほど大きな上向きの圧力が加わります。風がものすごく強くて、この上向きの圧力が、翼の上に加わる下向きの圧力+重力にうち勝つほど強くなったとき…。
  翼は、ふわりと浮き上がります。

  もちろん風と云ったって、ドライヤーで風を送ったくらいじゃ飛行機なんか飛びやしません。しかも飛行機は翼しかないわけじゃありませんから、機体そのものの重さを持ち上げるくらいの風が吹かないと飛びません。しかもこれは「浮く」だけで、前に進むわけじゃありませんから、仮に置いてある飛行機の前からものスゴイ強風が吹いてきたとしても、そしてその風が機体が浮くに十分な圧力を発生させたとしても、浮き上がるだけでちっとも前に進みません。
  だいたいそんなスゴイ風はそうそう吹きませんから、スゴイ強風が吹いたらたまに浮くこともあります、ってんじゃ気球で浮いた方がマシ、というものです。
  そこで飛行機は前進して自ら風を生み出し、十分な速度に達すると、翼の上下に生じる風の速度差から強い上向きの圧力を得て、重力に勝ってふわっ、と浮き上がるのです。
  この上向きの圧力のことを、「揚力」と云います。翼に十分な速度が生じ、逆に言えば翼の上下を通る風に十分な速度が生じたとき、飛行機は、スゴイ勢いで舞い上がるのです。速度が大事、ということですな。

  プロペラ飛行機では、プロペラをぐるんぐるん回して前進する推力を得ますが、このプロペラも断面は翼と同じ形をしていて、同じ原理で揚力を発生させています。プロペラは垂直に立っていますから、この場合は上向きではなく、前向きの揚力を発生させて重たい飛行機を前進させるわけです。回転することで発生する内径と外径の揚力差で自分が折れちゃうことを防ぐため、プロペラには外にゆくにしたがってひねりが加えられています。(ジェット機は高温の空気が爆発的に膨張する反動を受けて前進します)
  旋回にもこの揚力が使われています。片側の翼の後端の形を変えることで、翼の片方の揚力を増大させてもう片方の揚力を減少させ、機体を傾けて遠心力と斜めの揚力を釣り合わせ、バイク同様にひっくりコケないようにして曲がるわけです。ただ機首の向きだけを変えて曲がろうとすると、飛行機もバイク同様に空中でコケます(フライト・シミュレーターでラダーだけを使って曲がってみるとわかります)。

  しかしまったくこの原理だけで飛んでいるというわけでもないらしく、

2.空気流が翼にぶつかる反作用による説明  社団法人 日本機械学会流体工学部門様のサイト

3.流線曲率の定理による説明

  とか、イロイロあるらしいンですが、日本で読まれている教本の多くはベルヌーイの定理を主眼として飛行の原理を説明し、ちょっと聞きかじったところではアメリカの飛行教官はこれに加えて上記のような要因も説明とするのだ、と聞きました。

  してみると、まったく完全に、飛行機が浮上する理論的な根拠が説明し切れているのかどうかは疑問に思えてきますが、まぁライト兄弟以来動力飛行機は実際に飛んでいるのですから、ともあれ「こう作れば飛ぶ」というノウハウがあって、そのように作った飛行機は実際に飛ぶ、ということだけは間違いがありません(怖くなってきました?)。たかだか百年足らずとはいえ、しかし、このノウハウの積み重ねは膨大です。

  気が遠くなるような数の人々が、気が遠くなるような回数の飛行を繰り返して、現在の飛行技術は培われてきたのです。トップページにも書きましたが、そこにはらわれた数多の努力を思うと、人間の営みに感動せずにはいられません。
  そして、確かに、飛行機は飛んでいるのです。雨の空も、嵐の空も、南の空も、北の空も、凍るような空も、暖かい空も、海の上も、街の上も、はなはだしきは成層圏さえも、人間の飛行機は飛ぶことができます。そりゃあ人間のすることですから、完璧というわけには行きません。飛行機が墜ちる可能性は、いつだってあります。しかしそれは、人間の扱う道具にはいつだってついてまわる危険に過ぎません。なんでもない車が、いつだって人を殺せるように。
  ノウハウを築き、理論を携えて、人間の飛行機は空を飛びます。危険なものでもあるとはいえ、それは、ずいぶんとすごい事実ではないでしょうか。(飛んじゃうんですよ?)
  ともあれこのようにして飛行機は飛ぶわけですが、理屈を知ってさえ、わたしはそのことにまだ感動し、そしてまた呆れます。よくもまぁ、そんなことが出来るもんですよね、人間は。

  ちなみに、極端な場合、飛行機は片翼で飛ぶことができるそうです。理論家たちは、後からどうしてそれが可能だったのか、さんざん考えて理屈を解明したのだそうですが、最終的には、たぶんよくわかっていないに違いありません。この話はレシプロ、ジェットを問わず戦闘機の場合に幾つかの例が知られています。他にも隠れた片翼飛行の話があるのかも知れません。いずれそんなとき、パイロットは理屈を考えて飛ばしていた訳ではないでしょうから、やはり飛行技術というものは、ノウハウの占める部分が未だ大きい、といっちゃっていんじゃないでしょうか。

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