2. 典型的なインターネット利用における差異
- インターネット利用目的の日米比較
1997年に実施された国際比較調査によると,日米のインターネット利用目的の差が明確となる。[他にも同様のデータが発表されているが,日米間で調査の「項目」や「分類」が異なるので,日米の比較が困難であるので本レポートを採用する。]図3から,日本におけるインターネット利用は1)電子メール,2)ソフトのダウンロード,3)ニュース購読に集中されており,米国でのより広範囲な利用に比べて遅れが目立つ。[データは本目的の総計が100%となるように正規化(ノーマライズ)している。また,元の調査にあった「ホームページの閲覧」は目的から除外していること,サンプル数が小さいこと,実施年が2年前であることを了解いただきたい。]
図3.インターネット利用目的の日米比較
NTTデータ「情報化と生活意識に関する国際比較レポート」1997年より
- 電子商取引の実現可能性の検討
インターネット利用の典型であるBtoC(企業と一般消費者間)の電子商取引の実現に関して,日米では画然とした差異がある。すなわち,一般消費者向けの電子商取引において,日本は米国に比べて規模は約35分の1であり,年数ではおおよそ4〜5年程度遅れている(1999年3月通産省調べ)。これを2003年には3年強の遅れまで追いつこうというのが政府の政策・予測であるが,実際これを実現するためには,2001年以降の急成長に備えてインフラやコンテンツを整備しなければこの日米の格差は縮まらないと通産省は予測している。
3. 日米のプロバイダーの比較
米国の一般消費者向けのプロバイダーは,加入者数の多いものからリストアップすると
4. 日米間の差異の原因・理由
日米のインターネットの家庭での普及率,利用者数,および総接続時間の差異は何から来ているか。最後の一マイルがNTT東・西の地域会社に独占されていることにより米国に比べ高額な地域電話料であると推定する。これが,総接続時間の日米差をもたらし,ISP業者に悪影響を与え,さらには,利用者にとっては好ましいISPが出現しないこととなり利用者数や総接続時間の増大を生まない。結局,NTT地域会社の収入を増大させないため地域会社も料金を下げられないという「三すくみ状況」にあると判断する。以下で日本におけるインターネットビジネスを立ち上げ,これを発展させるにはどうすると良いかに関して検討する。
5. 将来に対する展望
最大の問題点である高額な地域電話に対応する新技術が出現し始めた。1)大規模な新CATV会社が安価な定額インターネットサービスの提供を始めた,2)ADSLの実験が開始され,地域限定ながらプロバイダーやキャリアが低額な定額サービスを始めた。これら新しい動きがISPに対する刺激になる可能性を持つ。日本におけるインターネットの利用者にこれらの競合するアクセスラインを提供することにより,元々かなりの普及率・民間消費をしている利用者には良い刺激となろう。インターネットの普及が拡大し,必要なインフラやコンテンツ・ソフトに対する需要,実現の技術的な需要の増大が期待できる。これにより,現状が少しでも改善するだろう。インターネットインフラの提供者(ISP)は,接続料の低下を2〜3年間手をこまねいているのではなく,他の手段によって安価なアクセス上に新規なサービスを提供してゆくことにビジネス資源を集中する,これがインターネットビジネスの課題を解決する最重要な手段である。
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