著名な,バーチャルサイトである,アマゾンドットコム社が,利用者のプライバシーを考慮して,1週間前に開始した個人情報を提供するという「パーチェスクラブ」サービスを変更した。これは,ECのサイトでの個人の購入情報を収集して,これを第三者に提供するサービスであるが,購入者のプライバシーを考慮して,購入者が自分の情報を提供するか否かを決定できるようにしたもの。そうしないと,ユーザーは自分の個人情報が無断で第三者に配られるのを恐れて,アマゾンドットコムにアクセスしなくなると,あの強力なアマゾンドットコムですら恐れた。
音楽のネット配信をソニーミュージックエンターテインメント社が開始したとの報道を受けて,競合する会社としてのビクター社に,今後の動向を聞いた。それによると,ネット上で無料でMP3のソフト(音楽)が違法に提供されつつある現状を恐れ,ソニー社はネット上で安価に提供を始めたようだが,独自にNTTとの共同でネット上での販売のインフラの構築を手がけているビクターとしては,レコード販売会社との関係を重視し,また,非常に費用のかかるソフトの開発に見合った収益を得なければ,事業が継続できないなどの観点から,煮え切らない回答になっている。しかし,小林の見解では,デジタル放送の展開などを考えると,ソフトの保持が如何に重要であり,それを開発することがすなわち今後の事業での勝者になると信じており,回収の見込みの立たない安易な配付には賛成できないが,CDなどの価格が下がることによって購買者数が増加して,市場が拡大することも考慮すると,やはりネットを経由しての販売を避けて通れないのではないか。それがいつか,と言うのが重大な判断点になろう。
デジタルTV(衛星,地上)を含め,2000年代の始めには技術的には開始されるが,事業者がそれに対応して,コンテンツ(TV放送,音声の放送,音楽配信)などの提供が可能かというと,ユーザー数が拡大するには,ハード,通信費用などの問題が解決されなければ急速な拡大は見込めないので,2005年頃までは事業化が順調に進まないのではないかと考える。(NTTが安価な,定額・低額のネット常時接続を提供するようになれば,事情は一変するであろう。そうすると,デジタルTVや携帯端末の価格自体は相当に急速にこなれるであろうから,2005年を待たず,2003年頃には急速に展開するであろう。しかし,NTTが依然として自社の収支に重点を置いたような価格設定を継続するならば,日本におけるこのようなデジタル情報の安価な提供や,ユーザーの購入行動は進展しないであろう。)そうすると,日本においては,欧米,ないし,アジア諸国の動きに大きく後れを取るようになるであろう。NTTが賢明な行動をとるようになることを心から望むものである。